ながさき南部生産組合40周年、おめでとう。 | 青木隆夫の

ながさき南部生産組合40周年、おめでとう。

 ながさき南部生産組合が40周年を迎える、ということでおっとり刀で島原に駆け付けた。会長の近藤一海さん、代表理事の児玉光博さんと知り合ったのはサイボクにいたころ、大地を守る会の道場さんからのご紹介であった。その後、オーストラリアに畜産の視察旅行をした。当時、児玉さんは柑橘と共に肉牛肥育にも取り組んでいた。本場を見ることで、貧しい牛飼いを諦めさせることが近藤さんの目的であったのかもしれない。岩手県山形村の小笠原さんも同行していたのだが、そちらのほうは諦めることなくショートホーン日本短角種を地域の特産品に育て上げている。
 もちろん視察だけでなく宿泊地のトゥーンバからタクシーで出向いたブリスベンのカジノやシドニーの怖い場所での冒険も忘れることができない。みんな元気があり余っていた30年以上前の話である。
 その後の近藤さん率いるながさき南部生産組合の快進撃は、ここで語るまでもない。現在の組合員は150名、平均年齢53.7歳、取扱高23億円、1人当たりの生産額は約1100万円になる。有機農業を原点とする専業農家の集団である。取引先は首都圏および九州の生協、らでぃっしゅぼーや、および自社の直売所である。
 私が再び、南部生産組合にかかわるのは、いまから10年ぐらい前のことだ。近藤さんから相談があるというというので、南有馬町の本部へ出かけた。組合員の高齢化や現在の販路が生協に限られていることなど、組合は今は順調だが将来を考えると直売所へ乗り出すべきではなかろうか?ということであった。初めて出会ったのが直売の元祖サイボクであったので、近藤さんも興味を持っていたのだろう。
 とはいえ、事態は簡単には進まない。まず、生粋の百姓集団であるために、直売所への出荷がどうも腑に落ちない。島原という土地に消費者も観光客も少ない。道の駅もあるが閑散としている。雲仙が噴火した後だから、なおさらのことであった。
 そこで、土地を島原ではなく輸送可能な諫早市に求めることになった。大変苦労したのだが、貝津町にある創成館高校が、グラウンドの一部を売却してもいいと言う。さっそく不動産屋と共に理事長に面会をし、良い手ごたえを感じた。その後、多少の紆余曲折はあったのだが、無事土地は取得できた。なお、当時は弱小チームであった野球部も今年甲子園に出場するようになった。
 その一方で、近藤さんとはスローフード協会主催の第1回テッラマードレへ出かけたり、30周年向けの書籍を作ったり、その講師に猪瀬直樹さんにお願いしたり、また、組合員の合意形成に向けた講演会などを行っていた。平地などほとんどない半島の畑で組合員たちは実によく働く。登録されている畑は9000枚に及ぶ。会議や講演は昼間ではなく夜行われ、それからじっくり体力と胃袋勝負の酒宴が始まるのである。天草四郎の乱以降に入植した百姓の末裔たちは実にタフである。また、南部生産組合の周辺では諫早干拓が進み、雲仙の復興も着々と進んだ。
 農家のバザール「大地のめぐみ」が立ち上がったのは、最初の話から3年ぐらい過ぎていた。産地デポを利用した運送方法、漁協との連携、仲間との連携など、大急ぎで品揃えの形を作った。平成16年の暮れに開店し「大みそかまで10日間で1000万円売ろう!」と近藤さんは気合を入れたものである。しかし、産地から離れていることは直売所にとって大きな不利である。島原の野菜は定評があるが、生産者が近くにいないので、なかなか消費者ニーズが理解できない。供給と需要のマッチングが直売所の取柄であるの…。始めて1年はいつも野菜が足りないような状況であった。
 苦労するほど知恵は湧いてくる。この百姓軍団は決して簡単には諦めない。長崎の生協、ららこーぷの理事長を口説き、有力店舗にインショップを作り、直売所をその配送拠点としたのである。流通量が増えれば生産者もよいものを運んでくる。徐々に売上が増えてきたのである。さらにこの手口を見た福岡のエフコープがインショップを作らないかと声をかけてきた。現在は、福岡、長崎に10店舗のインショップを持つようになった。売上は直売所と合わせると5億円を超えるようになった。生産と並ぶ事業へと直売所が徐々に発展してきたのである。そして昨年は福岡県春日市に「大地のめぐみ2号店」を出店したのである。

 さて、今回の40周年記念フォーラムの参加者は250名。日本全国から関連ある自立している農家、そして取引先がやってきている。東京の人と島原で会うのもおかしな話だが、これも近藤さんのご人徳と変わらぬ活躍のおかげである。これからは現在の代表理事である児玉さん、そして専務である永池さん、永友誠さんという新しいリーダーたちのもと、循環型農業の実現と付加価値販売を成功させ、さらに50年先まで発展されることを望みたい。
なお、式典に続いて行われたフォーラムの演題と講師は、以下の二人であった。
1.「TPPと日本の選択」 ノンフィクション作家 関岡英之氏
2.「農業経営政策の展開方向」 農林水産省経営局長 奥原正明氏

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