弁当と直売所 | 青木隆夫の

弁当と直売所

 直売所の農産加工品は売場には欠かせないものとなっている。加工品はジャム、ジュース、漬物など、旬に大量に収穫できる農産物の長期保存を目的としたものと、直売所の野菜を利用した消費期限の短い「惣菜」がある。毎日良く売れるのは、もちろん後者の惣菜である。直売所によっては、すべての売上の30%近くを占めているところもある。


 そのなかでも、特に売上が大きいのが弁当である。直売所で製造し、目の前で詰めてくれるものもあれば、個人の加工所で作られる揚げ物、煮物、焼き物など、女性たちの得意な料理を組み合わせた弁当、おにぎり、寿司類など、どれを買おうか迷うほど多くの種類がある。これは、直売所に限ったことではなく、スーパーのほかにも宅配などで弁当が売上を伸ばしている。


 その弁当市場の活気を支えているのが、高齢世代である。調理が毎日の生活の中で負担になってきているのである。特に直売所では、利用者の年齢を調べてみると、60歳以上が6~70%を占めていることも珍しくはない。高齢者をターゲットとした商品提供、なかでも胃に負担の少ない手作り弁当に人気が集まるのも当然のことである。
 私自身もこれから直売所を新設しようというコンサル先では、1年ほど前から保健所の担当官を招き講習会を開くなどして、積極的に製造することを薦めている。旬と端境期があり売上の不安定な野菜を補完するうえでは不可欠の商品だからだ。下表のように、弁当、総菜などの調理済み食品に取り組まない手はない。


 しかし、問題もある。保健所の許可を得て、単独で運営している施設ではなく、飲食店の厨房で作っている弁当も直売所や道の駅には数多く出品されている。店の名前でなく個人の名前で登録されるので、消費者にとってはあたかも農家の手作り品のように見える。

 もう一つの問題は、繰り返すようだが飲食店の厨房の衛生状態である。「衛生優良店」のような保健所のお墨付きがある店なのに、レンジの周辺は油だらけ、コックさんは帽子一つかぶらず普段着のまま調理している、裏庭で魚を焼いているなどなど…パッと見でも、ヤバいことがわかる。農家には厳しいのに、どういうわけか保健所は飲食店にはまったく甘いようだ。そのうち必ずどこかで事故が起きるに違いない、と私は思っている。


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直売所の弁当コーナー500円前後の価格帯が良く売れる


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食料、調理食品及び外食の実質年間支出金額指数の推移(1980年=100)


*「弁当及びそうざいの衛生規範」(昭和54年6月29日 環食第161号厚生省環境衛生局食品衛生課長通達)には以下のように定義されている。
●「そうざい」の定義
通常、副食物として供される食品であって、次に掲げるものをいう。
①煮物:煮しめ、甘露煮、湯煮、うま煮、煮豆等
②焼物:いため物、串焼、網焼、ホイル焼、かば焼等
③揚物:空揚、天ぷら、フライ等
④蒸し物:しゅうまい、茶わん蒸し等
⑤和え物:胡麻あえ、サラダ等
⑥酢の物:酢れんこん、たこの酢の物等
●「弁当」の定義
主食又は主食と副食物を容器包装又は器具に詰め、そのままで摂食できるようにしたもので、次に掲げるものをいう。
・幕の内弁当等の○○弁当、おにぎり、かまめし、いなりずし、その他これに類する形態のもの及び駅弁、仕出し弁当等。